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家族信託のデメリット

■身上監護権の有無
成年後見制度は後見人の職務として被後見人の財産の管理のほかに、被後見人の生活の維持や介護等、身上の保護に関する職務、いわゆる身上監護権があります。(民法858条)
一方、家族信託制度は財産の管理や処分を行う制度です。身上監護権については取り決めがなされていません。そのため、認知症になった人の保護のためと考えれば成年後見制度と併用をするのが望ましい形になります。
信託契約の中に身上監護に関する規定を盛り込むこともできますが、本人の名前での契約が必要な場合など、法定代理人の権限を有する成年後見人でなければできないこともあり、家族信託制度ではカバーしきれない部分が存在しています。

民法858条
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

■遺言でしか行えない行為
家族信託制度は「遺言代用信託」という信託法の90条によって示された仕組みによって、遺言と同様の効果を発生させることができます。しかし、この仕組みでは財産の承継は行えますが、未成年後見人の指定や、子の認知を行うといった身分行為はできず、遺言でしか行うことはできません。
家族信託制度では遺言のすべてにとって代わるということはできないのです。

信託法90条
次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一  委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託


■節税効果について
家族信託制度は、信託それ自体には節税効果はありません。家族信託契約を結んだ後に不動産の売却や買い替えを行うことによって、結果的に相続税対策などになるのです。そのため信託を組んだだけでは税務上のメリットがないことは理解する必要があります。
また逆に受益者は財産を自由に使用、処分できないのにもかかわらず財産を取得したものとして課税されます。これをみなし相続財産といいますが、これによって税負担が重いように感じる場合もあります

■専門家の不足
家族信託は平成18年の信託法の改正によって本格的に利用が行われるようになりました。そのため、専門家が少なく、弁護士や司法書士ならだれにでも相談ができるというわけではありません。
また裁判例というものがほとんどなく活用しづらいということも挙げられます。
しかし、家族信託制度がこれまでの相続のやり方や財産管理の手法では解決できなかったものを解決する手段であることは間違いなく、これからの普及が期待されます。

■受託者の負担
受託者には信託法上の様々な義務が課せられます。その1つが信託財産の分別管理です。これは信託財産を受託者自身の固有財産とは完全にわけて管理する義務のことを言います。
(信託法31条)
またそのほかにも他人の財産を管理・処分するため自分のもの以上の注意義務があります。
そのような負担の大きい管理を行うにもかかわらず原則として受託者には報酬は発生しないため、受託者を選ぶときは本当に信頼できる人物を選ぶ必要があります。

信託法31条
受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一  信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。
二  信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を他の信託の信託財産に帰属させること。
三  第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの
四  信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの

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