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受益者連続型信託

■受益者連続型信託の概要
受益者連続型信託は平成18年の改正信託法によって認められ、信託法の91条で明文化されています。この仕組みは初めの契約段階で、自分の死後何代も先の受益者を指定しておくことができるというものです。
例えば遺言ではこのような次の次を決めていく相続を行うことはできません。親が子に対して遺言で財産を残すことは可能ですが、その子の次には孫に相続させるといった指定をしても、その遺言は有効にはならないのです。これは遺言が遺言者の財産を承継取得する人物を決めるものであり、その財産は相続人の固有のものとなるためその都度遺言が必要となるためです。
しかし、家族信託は契約行為のためこのようなことが可能なのです。
ただし、信託契約から30年後の受益者の死亡をもって契約が終了することには注意しなくてはなりません。これは家族信託が委託者から最終受益者への条件付き贈与という構成になっており、期間を設けなければ最終受益者が一体だれか分からなくなってしまうため、贈与の構成を成さなくなってしまうためです。

信託法91条
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

■受益者連続型信託の相続税
受益者連続型信託では受益者の死亡によって受益権が承継されますが、そのたびに当該受益権が財産権として相続税の課税対象となることに注意が必要です。(相続税法9条の2)受益者連続型信託はあくまでも、誰に資産を承継するかということに重点を置いたものであると考えなくてはなりません。

相続税法9条の2
信託(退職年金の支給を目的とする信託その他の信託で政令で定めるものを除く。以下同じ。)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいう。以下この節において同じ。)となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与(当該委託者の死亡に基因して当該信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなす

■受益者連続型信託と遺留分
信託による受益権の継承は遺留分適用を排するものではなく、遺留分減殺請求の対象になる可能性があります。したがって、受益権の承継が発生するたびに、遺留分減殺請求が行われるといったこともありえるのです。しかし、一方で最初の受益者が死亡したときのみ遺留分減殺請求の対象になるという意見もあります。さらに遺留分はそもそも関係しないという説もあります。これは信託法の91条を解釈した際に、受益者が死亡することによってその受益権が消滅し、新たな受益権が承継者に発生すると考えた場合です。これによって消滅した受益権は被相続人の一身に専属していたとも考えられます。その場合、相続とはならないのです。(民法896条)
このように受益権の移動が相続の規定に服するのかということに関しては、改正信託法が施行されてから日も浅く判例も出ていないため、今後の判決次第とも言えます。したがって現状では、受益者連続型信託によって承継される財産にも遺留分減殺請求が行われる可能性があるとの前提で信託を行うことが無難であるといえます。

民法896条
続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。


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